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第47回:「洪水の被害想定:死者3800人も」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。平成17年8月、アメリカで「ハリケーン・カトリーナ」による災害で大きな被害が出たのは、皆さん覚えておられると思います。死者・行方不明者1000人以上、浸水家屋約16万戸、浸水面積374平方キロという被害でした。

わが国では、東海地震などの大地震による被害想定は公表されていますが、洪水による被害想定はこれまでありませんでした。中央防災会議では、「大規模水害対策に関する専門調査会」を設置し、大規模水害発生時の応急対策等の検討を行うため、利根川を題材に、利根川が氾濫して大規模な水害が発生した場合に想定される死者や孤立者の数、浸水想定時間に関する被害想定をとりまとめ、先月25日に公表しました。水害による被害想定の公表は、国内では初めてのことです。
http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/suigai/080325kisya.html

まず、浸水継続時間です。昭和22年のカスリーン台風では、東京の江戸川区、葛飾区が20日間にわたって浸水しました。ハリケーン・カトリーナではニューオーリンズ市内は43日間も浸水しています。

大雨の際、街中にあふれた内水を排除する必要があるところには排水ポンプが設置されていますが、大きな河川が氾濫すると、浸水によって運転が停止することがあります。ハリケーン・カトリーナのときは、8割以上のポンプ場が停止しています。

利根川が氾濫した場合はどうなるのでしょうか。カスリーン台風と同規模で200年に1回発生する大洪水により、埼玉県大利根町で堤防が決壊した場合を想定しています。排水施設が稼動しないケースでは、堤防決壊から3日後には、約180万人の居住地域が浸水します。東京の江戸川区では3m、足立区や葛飾区でも、2m以上浸水するところがでてきます。1週間たっても、約160万人の居住地域(約310平方キロ)が浸水し、その後も浸水が継続します。排水が進まないため、1か月過ぎても、約150万人の居住地域が浸水したままです。排水施設が全て稼動するケースでも、堤防決壊から1週間後で約20万人の居住地域(約120平方キロ)が浸水し、浸水面積の95%の排水が完了するまでに約3週間もかかると想定されています。相当長期間にわたって浸水が継続することがわかりますね。

次に、想定される死者数です。決壊する堤防の位置を変えて、いくつかのパターンで試算しています。死者数が最大だったのは茨城県古河市の堤防が決壊するパターンで、仮に4割の人が避難したとしても、排水施設が稼動しない場合は、死者数は約3800人に達します。排水施設が全て稼動する場合でも、約3500人。相当な被害です。この決壊パターンの場合、浸水区域に高さ5メートル未満の戸建て住宅が多いことが影響すると考えられます。

避難率が高まったらどうなるでしょうか。避難率80%の場合は、ポンプ運転がない場合1300人、ある場合1200人と、死者の数は1/3程度まで減らせます。内閣府と国土交通省が平成18年に、荒川浸水想定区域内の住民を対象に実施したインターネットアンケート調査結果によると、避難率の平均値は46%とされていることから、今回の想定は40%をベースにしています。しかし、過去の実際の災害では、平成16年の新潟豪雨で19%(見附市)、同年の台風23号豊岡水害で33%と、必ずしも高い数字でないことが気になります。避難率を高めるには、水害の切迫性を伝える各種情報提供や避難勧告等を効果的なタイミングで行うだけではなく、洪水ハザードマップの整備や避難訓練の実施等、普段からの備えが大切だと思います。

最近は異常気象なので、想定外の規模の洪水を覚悟しなければならないかもしれません。想定している、200年に1度の規模の洪水の2割増の洪水量だとした場合、浸水面積は1.1〜1.3倍程度ですが、死者数は1.8〜2倍近くになると試算されています。

最後に、孤立者の数です。埼玉県大利根町で堤防が決壊し、警察、消防、自衛隊が関東地方に有する全てのボート数(約1900艇)に相当するボートを用いて救助活動を実施した場合を想定しています。避難率が40%として、排水施設が稼動しないケースで、孤立者は最大約64万人。そのうち、約48万人が要救助で、救助の完了は14日後。排水施設が全て稼動するケースでも、孤立者は最大約48万人。要救助12万人を4日後に救助完了と想定されています。

今回の想定結果をもとに、今後、国では、被害軽減を図るため広域避難体制、孤立者の救助体制等の検討を行い、大規模水害対策をとりまとめる予定です。今年も、あと1月半ほどで、雨の多い季節になります。普段からの備えをきちんと行うことが必要ですね。

九州地方整備局では、毎年5月に大規模な水防演習を実施します。今年は5月11日に、嘉瀬川の河川敷で、佐賀県総合防災訓練と共同で開催する予定です。
http://www.qsr.mlit.go.jp/takeo/kisya/kisya20/200324.pdf

それではまた来週。

********
渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第46回:「警固断層でM7.2の大地震が発生したら」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。先週11日、政府の「地震調査研究推進本部」が、警固(けご)断層帯で発生するおそれがある地震の最新の評価結果として、想定される震度分布等を公開しました。今日はその内容をご紹介しましょう。
http://www.jishin.go.jp/main/kyoshindo/08apr_kego/index.htm

「地震震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣)」は、我が国の地震調査研究を推進するための政府の特別機関で、一定規模以上の地震について、随時評価を行っています。我々は、この本部のことを、「推本」と略称しています。

警固断層帯は、金印で有名な志賀島(しかのしま)北西沖の玄界灘から博多湾、さらには福岡市中心部(中央区、南区)、春日市、大野城市、太宰府市を経て、筑紫野市に至る総延長55kmに及ぶ断層帯です。福岡市内では、西公園あたりから浜の町、さらに赤坂を通り、3年前の地震でも建物に大きな被害が出た大名や今泉地区を通過し、薬院を過ぎたあたりで西鉄天神大牟田線とほぼ並行して走っているのではないか、と推定されていますが、詳しいことは実はわかっていません。市の調査検討委員会が、本格的な試掘調査をする予定です。

さて、この警固断層帯ですが、過去の活動時期の違いから、玄界灘から志賀島付近にかけての、2005年の福岡県西方沖地震の震源域にあたる北西部と、志賀島南方沖の博多湾から筑紫野市までの南東部に区分され、後者が「警固断層」(延長27km)とよばれています。

北西部は、3年前にエネルギーを放出したので、ごく近い将来に再度動く可能性は低いと考えられるものの、南東部については、今後、マグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定されています。これは、1995年に発生した阪神・淡路大震災(M7.3)にほぼ匹敵します。その際には、断層近くの地表面で、2m程度も、「左横ずれ」が生じる可能性があると考えられており、今後30 年以内の地震発生確率は0.3〜6%と、我が国の主要活断層帯の中では危険度が高いグループに属しています。

福岡平野や筑紫平野などでは、岩盤の上に、軟弱な地層が非常に厚く堆積しているため、地震波が地表面に及ぼす影響を予測・評価することは簡単ではありません。このため、今回推本では、地下の地盤構造についてモデル解析を行い、断層が最初に破壊される場所がどこかによって、4つのケース(博多湾内、福岡市内、大野城市付近、筑紫野市付近)の揺れ方をシミュレーションしています。結果は、いずれのケースにおいても福岡市内の広い範囲で震度6強以上、筑紫平野では北東部(筑後川中流域)の広い範囲で震度6弱以上、南西部の広い範囲で震度5強以上となっています。また、博多湾内または福岡市内(断層の北西側)から破壊が開始した場合には、破壊の進行方向にあたる筑紫平野北東部(うきは市、久留米市、小郡市、鳥栖市)の広い範囲で震度6 強以上が現れています。警固断層で影響を受けるのは主として福岡市内だと思いこまないほうがよさそうですね。

さて、地震は岩石に強い力が加わって破壊されることで発生します。地震のエネルギーであるマグニチュードは、この破壊の大きさ、広がり具合に影響されます。M8の地震では断層面の長さが100〜150km,断層のずれ(食い違い)の量は4〜5mとなります。また、M7の地震では、断層の長さが30〜40km、ずれの量が1.5〜2mというイメージで、警固断層の場合は、ほぼこれに相当すると考えられています。

断層が縦にずれる場合を「縦ずれ」、横にずれる場合を「横ずれ」と言います。東日本では前者、西日本では後者が多いと言われています。九州の地下は、プレートやマグマの影響で、南北方向に引っ張る力と、東西方向から押す力が働いており、警固断層の場合、断層面にそって、北西/南東方向に横にずれると考えられます。(実際は、縦ずれの要素もあり、西側が上がる形ではないか、とも言われています。)阪神・淡路大震災では、淡路島西岸の野島断層が動き、ずれ(食い違い)量1.5〜2mの右横ずれを生じたことがよく知られています。

福岡県防災会議が昨年3月まとめた被害想定によると、この地震による建物被害は木造建築物で全壊9,064棟、死者は最大754名と推定されています。福岡市によると、木造住宅の耐震化率はわずか40%だそうです。福岡市では、耐震改修を進めるほか、警固断層周辺で特に危険と推定される一帯で、一定の高さ以上の建物を新たに建てる際は、強度を関東並みの基準に引き上げるように条例を改めるなど、耐震改修促進計画の策定を急いでいます。安全に暮らせるまちにするため、皆で努力していきましょう。
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/1490/1/toshi3kenchiku-plan.pdf

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第45回:「あなたは無事に家へ帰れるか?」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。平日の昼間、都市で大地震が発生すると、大勢の人が「帰宅困難者」になります。このほど、内閣府がその本格的なシミュレーション結果を発表しましたので、今日はそれをご紹介しましょう。

首都直下地震について、中央防災会議に設置された「首都直下地震対策専門調査会」が、既に被害想定を公表しています。最悪のケースで、死者約1万1千人、建物全壊約85万棟という、阪神・淡路大震災を上回る大災害と予測されています。仮に平日の昼間発生すると、約1400万人が自宅以外の場所で地震にあう、ということです。すごい人数ですね。このような膨大な数の帰宅困難者等が自宅等に向けて一斉に帰宅を開始した場合、路
上では大混雑が発生します。場合によって死傷者が生じたり、応急対策活動が妨げられたりするなどの混乱が生じるおそれもあります。また、トイレや休憩場所が不足するなど、様々な問題も発生するでしょう。

このため、「首都直下地震避難対策等専門調査会」(座長:中林一樹 首都大学東京大学院教授)が設置され、帰宅困難者の問題を中心に検討を重ねていました。先週4月2日、同調査会が開催され、そこで、首都直下地震後に発生する道路の混雑状況やそれに対する対策の効果について、シミュレーションした結果がとりまとめられました。
http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/shutohinan/080402/shiryo_1.pdf

 その結果は、なかなか厳しいものです。都内の道路は、帰宅困難者であふれかえります。「混雑度A」とよばれる、ラッシュアワーの満員電車の状態(1平米に6人もの人がひしめく)に何時間もあい、ほとんど前に進めない(1時間にわずか400m)状態になります。例えば、都心から和光市(約20km)まで、通常は歩いて5時間程度ですが、地震後は約15時間もかかり、そのうち9時間以上も満員電車状態にあう、という予測になります。

満員電車に30分も乗っていると、本当に疲れますよね。ましてや、そういう混雑状態で歩道を歩くということは、立っているだけではなくて、歩いていることで疲れるでしょうし、雨の日だともっと大変です。トイレの心配もあります。途中で火災がせまってきたりすると、大混乱になるかもしれません。

調査会では、こうした混乱が軽減されるいくつかのパターンを提示しています。まず、時差帰宅です。仮に、1/3の人が帰宅を翌日にずらした場合は、満員電車状態の道路に3時間以上滞在する人の割合は半分になります。半分の人が翌日にずらせば、この割合は約8割も減少するそうです。翌日にしなくても、いっせいに帰宅を開始せず、3時間ごとの時差をもうけるだけで、約2割減少するそうです。

こうした行動には、安否確認が大きく影響します。家族が無事であるかどうかわからなければ、心配で心配で、大混雑の中、無理をしてでも帰宅したいということになります。でも、家族が無事であることが確認できたら、少し様子を見てから帰宅しようと思う人が増えるはずです。シミュレーションでは、安否確認に24時間かかるというケースを想定していますが、それが6時間に短縮されると、混雑は約1割解消するとしています。

安否以外の情報も大切です。シミュレーションでは、徒歩帰宅者は現在いる場所の直近の道路の混雑状況しか把握できず、それ以外の場所の混雑情報や通行止情報は利用できないと仮定して計算しています。行ってみたら通行止めだった、ということがあちこちで発生し、混乱に拍車をかけます。もし、すべての道路の混雑状況や火災等による通行止情報が把握可能になったと仮定すると、混雑は約6割減少すると試算されています。携帯ラジオは必需品ですね。

シミュレーションは、混雑緩和に大きく影響するのは、「耐震化・不燃化等の推進」であるとしています。ちょっと意外ですね。震災による火災や建物倒壊がともに発生しないとした場合、3時間を超えて満員電車状態の道路に滞在する帰宅者は、約7割減少と、大幅な改善を見せることがわかりました。耐震化は、命を守るだけではなく、こうした効果も大きいのですね。

ところで、東京では最近、上記のシミュレーションに近いことが実際に起きているのです。平成17年7月23日、東京23区で13年ぶりに震度5強を記録しました。JR、私鉄、地下鉄すべてが止まり、運転再開まで最高7時間もかかりました。この間、およそ46万人がその場で立ち往生。各地の駅で混乱が見られました。

東京に限らず、福岡市のような大きな都市で大地震が発生すると、今回のシミュレーション結果のようなことがおきる心配があります。こうした混乱を避けるためにも、耐震補強の推進と、ご家族との安否確認方法をあらかじめ決めておくことは、とても大切だということを、今一度確認したいですね。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第44回:「お花見情報」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。新しい年度になりました。今日は、いつもと違って、やわらかいお話、気象台が行っている桜の開花、満開の観測についてご紹介しましょう。

4月1日は、新しい社会人を迎える日。今年はいい天気のうえ、桜があちこちで咲き始めていて、新年度スタートにふさわしい感じでしたね。私も、九州地方整備局に入省したフレッシュな1年生に対して、訓示などをしました。その日の夜、友人たちと一緒に、福岡市内の天神中央公園でお花見をしました。ちょっと肌寒く、桜も5分咲といったところでしたが・・・

 この時期、テレビの天気予報で、「桜前線」や「開花予想」などの情報が必ず流れます。一種の風物詩ですね。サクラは、気象庁の用語で、堅いですが、「生物季節(phenology)観測」の対象になっているのです。

 気象庁では、全国の気象台で統一した基準によって、ウメ・サクラの開花した日、カエデ・イチョウが紅(黄)葉した日などの観測を行っています。これを「植物季節観測」といいます。植物季節観測は、観察する対象の木(これを「標本木」といいます。)を定めて実施しています。

福岡管区気象台では、今年、3月24日に福岡のサクラ開花を観測しています。気象台の敷地内にあるソメイヨシノが標本木となっており、気象台職員が確認をして、5〜6輪以上の花が開いた状態になると「開花宣言」を出します。3月24日の開花は、平年(3月26日)より2日早く、昨年(3月21日)より3日遅かったそうです。
http://www.fukuoka-jma.go.jp/fukuoka/gyomu/sakura2008.html

 ちなみに、満開日とは、標本木で80%以上のつぼみが開いた状態となった日です。福岡では、4月2日に満開を観測しました。平年(4月3日)より1日早く、昨年(3月31日)より2日遅い満開です。今週末はお花見の見頃ですね。
http://www.fukuoka-jma.go.jp/fukuoka/gyomu/sakura20080402.html

 全国の情報は→ http://www.data.jma.go.jp/sakura/data/sakura2008_mankai.html

 植物だけではなく、「動物季節観測」というのもあります。ウグイス・アブラゼミの鳴き声を初めて聞いた日、ツバメ・ホタルを初めて見た日などです。福岡管区気象台では、今年、ウグイスの初鳴を2月21日に観測しています。平年より11日早いそうです。

生物季節観測は、すべての気象台で実施する「規定種目」と、各気象台が選択して観測する「選択種目」に大別されます。規定種目としては日本全国に広く分布している生物を選び、季節の進行の地域比較などに利用されます。一方、選択種目は全国的には分布していないけど、その地方の季節の進行を知るのに適している生物や、その地域の気候や産業との関係が密接で、地域の方々の関心が深い生物が選ばれています。

植物季節観測の規定種目は、ツバキ、ウメ、タンポポ、ソメイヨシノ、アジサイ、イチョウ等12種類。福岡管区気象台では、これに加え、選択種目としてスイセンの開花を観測しています。動物季節観測の規定種目は、ヒバリ、ウグイス、モンシロチョウ、ツバメ等11種類です。
http://www.fukuoka-jma.go.jp/fukuoka/kansoku/seibutu_kansoku_jokyo.html

 かつて選択種目となっていた、シマヘビ、アオダイショウなどが、各地で観測種目からはずされてしまいました。各地で都市化が進み、こうした生物の観測が難しくなってきたためだと説明されています。福岡管区気象台でも、昨年はヒバリの初鳴、トノサマガエルの初見が、「欠測」となっています。いったん廃止された観測種目でも、自然や緑が増えて、今後また観測しやすくなれば、復活する可能性もあります。そうなってほしいですね。

このような、気象庁の「生物季節観測」、世界の気象機関でも珍しい観測法ということだそうです。もともとは農業との関係で始まったようですが、現在でも、観測された結果は、季節の遅れ進みや、気候の違いなど、総合的な気象状況の推移を把握するのに用いられます。そしてなにより、新聞やテレビなどによる風物詩、身近な気象情報のひとつとして利用されています。こうした情報を通じて、気象についての関心を持っていただくといいですね。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第43回:「全壊と半壊」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。大地震の際には、多くの住宅が被害を受けます。「全壊○棟、半壊○棟」などと言いますよね。ちなみに、昨年の新潟県中越沖地震では、全壊1,319棟、半壊5,621棟でした。13年前の阪神・淡路大震災では、全壊10万棟以上、半壊14万棟以上という、桁外れの被害を記録しています。さて、この「全壊」と「半壊」、どう違うのでしょうか?

災害が起きたとき、住宅の被害を認定するのは、市町村の仕事になりますが、認定基準が内閣府から出されています。
http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/gaiyou.pdf

定義上は、「全壊」は、補修しても住めないくらい壊れていること、「半壊」は、補修すれば住めるようになる、ということなのですが、これではわかりにくいので、認定のための数値基準が定められています。「損壊割合」がわかりやすいのですが、床面積の7割以上が損壊したり流出したりした場合が「全壊」、7割未満2割以上が「半壊」です。

でも、地震で傾いた家など、床は無事だけど、家全体が傾いて、とても住めない、ということもあります。屋根や壁、柱など、住宅の主要な構成要素に「ずれ」「傾き」「ひび」などの被害が見られる場合は、それを一定の割合をかけて計算し、「損壊割合」ではなく、「損害(経済的被害)割合」として算出します。この割合が5割以上を全壊、5割未満2割以上を「半壊」としています。

地震ではなく、洪水による被害などはもっと複雑です。長時間浸水すると、壁や床が外見上壊れていなくても、断熱材がダメになったり、畳をすべて取り替えなければいけない状況になります。そのような場合も壁や畳に損傷があると認定できるよう、平成16年に内閣府から通知が出されています。
http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/higai.pdf

被災者生活再建支援法では、原則として全壊世帯に対し支援金が支給されるので、「全壊」か「半壊」かの認定は、慎重に行われます。また、全壊30世帯以上になると災害救助法の適用がある(市町村の人口規模等によって異なります)し、仮設住宅への入居要件等、「全壊」かどうかの判断は様々な施策の適用に影響してきます。

ただ、「半壊」でも、「やむをえず解体」した場合は被災者生活再建支援金が支給されるため、まだ補修できるのに解体する人が出る、との意見がありました。そこで、被災者生活再建支援法が平成16年に改正され、新たに「大規模半壊」世帯も支給対象とすることになりました。これにより、認定はさらに複雑になりました。この「大規模半壊」という言葉、実は私が命名したものですが、「半壊」のうち、大規模な補修を行わなければ住めない場合を指します。具体的には、「損壊割合」で5割以上、「損害割合」で4割以上が該当します。このほか、「半壊」に至らなくても、「一部損壊」という認定を受けることもあります。

この被害認定結果は、市町村から「り災証明」として被災者に発行されます。しかし、大地震直後は、この「り災証明」とは別に、家屋の「応急危険度判定」が出され、「危険」(赤)、「要注意」(黄)、「調査済」(緑)のステッカーが貼られます。この判定は「り災証明」ではないので、時として混乱が生じます。「危険(赤)」イコール「全壊」ではないからです。

応急危険度判定は、被災直後から実施されます。大地震により被災した建築物を調査し、余震などによる倒壊の危険性を判定し、避難場所に移動すべきかどうかを判断するもので、
判定結果は、建物の見やすい場所に表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建物の危険性について情報提供することにしています。そういう趣旨なので、建築物の損壊や損害割合を見る被害認定とは違い、例えば瓦や窓枠などの落下の危険性があるということで「赤紙」が貼られることもあるのです。

応急危険度判定の結果として「危険」と書かれた赤紙を目にすると、上記のように、被害認定ではない、という紙面の詳細も読まずに大きなショックを受けてしまう被災者が多いようです。被害認定調査は、応急危険度判定終了後に行われるケースが多いので、その結果を待って、再建等の判断を行うようにしましょう。

住宅の全壊、半壊等の被害認定は、上に書いたとおり市町村の仕事ですが、市町村職員が大地震を経験するのは、たいてい初めての場合が多いですよね。突然の災害発生で、どのような実施体制を組めばよいかもわからず、結果として認定事務が遅れることも心配されます。そこで、内閣府では、「大規模災害時における住家被害認定業務の実施体制整備に関する検討会」を設置、去る3月12日に開催された第4回検討会で、「大規模災害時における住家被害認定業務の実施体制整備のあり方について− 事例と例示 −」の案が提示されました。
http://www.bousai.go.jp/hou/daikibo/kentou4/jirei.pdf

人口10万人の架空の市「あんしん市」で災害がおきたケースを想定しながら、被害認定の流れや住民への広報のあり方など、わかりやすく解説をしています。市町村職員だけではなく、一般の人にも、被害認定の基礎知識が学べる資料となっています。一度、のぞいてみてはいかがでしょう。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第42回:「災害イマジネーション」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。昨日(3月20日)は、福岡県西方沖地震発生からちょうど3年目でした。Style FMの防災特別番組に出演させていただき、これまでの防災日記の内容を2時間半にわたっておさらいしました。防災知識は、何度も何度も繰り返して話題にすることが、「防災文化」を根付かせる上で大切なことだと思います。地球環境問題もそうですよね。

さて、今日は、「災害イマジネーション」のお話をしましょう。阪神・淡路大震災を実際に体験された方々の話を聞くと、次に何をやってよいのかわからなかった、先が見えなくて不安だった、という意見を多く聞きます。不安な中で、次々と襲いかかる困難な状況に常に全力で立ち向かわなければならず、気力も体力も消耗します。そうした様子がよく描かれているのが、古谷兎丸さんのコミック「彼女を守る51の方法」(新潮社)です。東京を突然M8の巨大地震が襲うという想定ですが、21才の若い男女が疲労困憊しながら最初の数日間をなんとか生き延びるというストーリーです。

大災害から生き延びる上で必要なのは、平時からの備えですが、そのためには、災害時に自分たちがどういう状況におかれているか、イマジネーションをする必要があります。今はテレビが発達しているから、災害を実際に体験しなくても、映像を見ればわかる、と思われがちですが、未曾有の大災害となった阪神・淡路大震災でも、テレビが詳細に捉えることができたのは、発生から数時間後の被災地の状況でした。

「イマジネーション」という言葉、最近はプロのスポーツ選手や、宇宙飛行士などがよく口にします。本番の前に、何度も何度も、「自分が置かれるかもしれない好ましくない状況」をイメージし、それに対してどう対処したらよいかを常に考える訓練をしているのです。

「災害イマジネーション」を提唱するのは、東京大学生産技術研究所の目黒公郎教授です。
http://risk-mg.iis.u-tokyo.ac.jp/

目黒教授は言います。「イメージできない状況に対する適切な心がけや準備などは無理である.防災対策を実現する上で最も重要なことは,災害発生時からの時間経過の中で,自分の周辺で何が起こるのかを具体的にイメージできる人をいかに増やすかである.この能力を高める努力をせずに,○○をしなさい、△△をしなさい...的なことを強いたところで,これは心に響かないし,長続きもしない.」

まったくその通りですね。目黒教授が開発した「目黒メソッド」という、災害イマジネーション支援ツールがあります。ちょっとやってみましょうか。
http://risk-mg.iis.u-tokyo.ac.jp/research2/manual/ohyama2002-2004.pdf

 典型的な状況をまず決めます。寝ているとき、家族と朝食の食卓を囲んでいるとき、通勤途中の電車の中、オフィスで、帰宅途中の繁華街で等々。さあ、大地震発生です。震度7!ここからが皆さんの作業。地震発生から,「3秒後,10秒後,1分後,2分後,...,10年後」まで、それぞれの時間帯に、自分の周辺で起こると考えられる事柄を1つ1つ書きこんでいきます。その上で、次のようなことを問いかけていきます。「あなたは何をしなくてはなりませんか?」「あなたに求められるものは何ですか?」「それを実行するためには何が必要ですか?」「今の状況で,それは入手できそうですか?」「できないと思われる場合,それはなぜですか?」

 さて、目黒教授が学生さんや、講演の際など多くの市民の方を対象にこの作業を行ってもらったところ、本当に現実的にイマジネーションを働かせることができた人はほとんどいなかったということです。「家族にけが人が出た」とか、あるいは、そもそも「自分が死ぬかもしれない」という想像はほとんど働かないそうです。教授が、「ところで、何であなたはピンピンしているんですか?」と聞くと、皆答えられないそうです。

目黒教授は、学生さんたちに、「もし自分が亡くなってしまったら、そこで物語を止めるのではなく、君の死を周りの人がどう受けとめて、その後生きていかれるのかを考えて記入しなさい。」と指導します。そのとき彼らは初めて気づくそうです。自分がいかに周りから大切にされ、多くの人たちのサポートを受けて生きているかを、そして自分は死んではいけない存在だということを。この認識が得られると、彼らには、何か防災対策をしなさいなどと言わなくても、自分でできる対策をしっかり考え、具体的に実行に移し出すことができる。
http://e-public.nttdata.co.jp/f/repo/466_j0704/j0704.aspx
目黒教授の「災害イマジネーション」の本当の狙いはこういうところにあるのではないかと思います。

この目黒メソッド、とっても簡単ですので、ご家族や友人の方々と一緒に楽しみながらやってみてはいかがでしょう。相互に意見交換する中で、絆も深まるかもしれませんね。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第41回:「火災合流、火災旋風」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。

今日は、大地震のときに市街地で発生する大火災についてお話しします。市街地で大地震が起きると、あちこちで火災が同時多発します。個々の火災は小さくても火災が合流すると巨大な火炎になることがあります。これが、「火災合流(Merging Fire)」とよばれるものです。

炎上する建物同士の炎が集まり巨大な炎になります。住宅などから出る可燃性ガスが上昇するため、通常よりも高い場所で炎が見られます。炎が巨大になるにつれ可燃性ガスの発生を促し、火災が雪ダルマ式に拡大してゆくのです。火災合流が起きると、延焼速度が高まり、消火は極めて困難になります。

合流した火災による火炎・火の粉・煙・有毒ガスなどが竜巻状の巨大な「つむじ風」となって大きな被害をもたらすことがあります。これが「火災旋風(Fire Whirl)」です。

火災旋風は、あらゆるものをもやし尽くすだけではなく、人や物を吹き飛ばし、その猛烈な風によって急速な延焼を引き起こします。1923年の関東大震災では、人々が避難していた陸軍被服廠(工場)の跡地であった空き地に火災旋風が襲来し、この場所だけで約4万人もの方が亡くなりました。

火災旋風は大規模な火災のときにしばしば発生するものです。上記の通り火災旋風が起きた場合は避難場所も安全では無くなるため、被害が飛躍的に大きくなります。

関東大地震の火災旋風の調査を担当した寺田寅彦は、火災旋風は、10kmの距離に「トタン」板を飛ばし、90kmの遠方に灰を降らせた、と紹介しています。また、江戸時代の大火の記録からも、過去にもこのような旋風があったと紹介しています。 

阪神・淡路大震災は、早朝、無風だったので、火災はそんなに多く発生しませんでしたが、切迫しているといわれる首都直下地震。冬の夕方、風速15m/s時に発生するケースでは、約65万棟が消失すると予想されています。(内閣府の被害想定)
http://www.bousai.go.jp/syuto_higaisoutei/pdf/higai_gaiyou.pdf

火災発生初期の逃げ遅れ、家屋全壊に伴う閉込め、火災延焼時の屋外での逃げまどいにより多数の死傷者が発生することが想定され、最大死者数は約8千人と予想されています。
特に環状6号線から7号線の間を中心に老朽化した木造住宅密集市街地が広がっており、火災が同時多発した場合、消防機関による消火が極めて困難となり、市街地の延焼が拡大する危険性が高くなります、

中央防災会議が決定した「首都直下地震対策大綱」(平成17年9月)によると、火災対策については、次のように書かれています。
http://www.bousai.go.jp/oshirase/h17/jishin_taikou.pdf

まず、出火防止対策です。建築物の耐震化だけではなく、不燃化の促進も大切です。自動消火装置付きの安全な火気器具の購入を促進したり、通電火災対策を浸透させるなどの対策も重要です。阪神・淡路大震災では、ガス管からガスが漏洩して、そこに回復した電気火花が飛んで火災が発生する、ということもあちらこちらで見られました。

次に、延焼被害を軽減するために、道路・公園等のオープンスペースを確保すること、避難地・延焼遮断帯として機能する河川整備を進めることが大切です。また、避難路が確保されないと逃げ遅れて火災に飲み込まれてしまいます。ブロック塀や自動販売機など、避難路を塞ぐおそれのあるものを点検することも重要です。住宅の耐震化は、この意味からも大切です。

国土交通省では、避難地・避難路の整備、建築物の不燃化・共同化を進めることにより、密集市街地の安全性を高めることとし、最低限の安全性として、密集市街地について不燃領域率40%以上の確保を目指すことを目標にしています。このため、特に緊急性の高い地域を「安全市街地形成重点地区」として指定し、区画整理事業等を推進することにしています。

倒壊家屋の中に閉じ込められて脱出することができず、生きながらに火災に巻き込まれるなどという事態は、絶対に避けたいものです。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第40回:「防災文化」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。

先日、「ぼうさい甲子園」について書いた際に、「水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊」の活動に触れました。それを読まれた「隊員」の中学1年生から、メールを頂戴しました。うれしかったので、その一部をご紹介します。

「これからも、佐波川がずっときれいであるように、もしも災害の時にみんなで助け合えるように、がんばります。そういえば、県知事さんにあったときに、防災文化という言葉がでました。これからも、佐波川で楽しく遊びながら、たのしいぼうさいします。」

「楽しい防災します」って、ステキな表現ですね。実は彼女の言っていることは、政府でも議論されてきたことなのです。内閣府が平成16年にまとめた、「民間と市場の力を活かした防災戦略の基本的提言」に次のような一節があります。
http://www.bousai.go.jp/MinkanToShijyou/index.html

「防災対策が重苦しいイメージにならないよう、できることなら楽しく発展につながる
方向に関連づけたい。日頃からストレスなく安全の問題を考えることができれば、人々の工夫やコミュニケーションが促進されるだろう。」

 私たち1人ひとりの力は小さくても、仲間と力を合わせて地域を守ることはできます。また、1人ひとりの行動をほんの少し変えることで、社会の流れを大きく変えることもできます。病気になってしまった後、適切な治療を施すことも必要ですが、日頃の努力の積み重ねで、病気にならない体を作ることがもっと大切ですよね。私たちの地域や社会を災害に強いものへ変えていこうとするこうした意志が共有されていることが「防災文化」とよべるのではないでしょうか。

そうした考え方を進めて、政府の基本方針が作られました。平成18年4月、「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」が中央防災会議で決定されています。
http://www.bousai.go.jp/km/shk/index.html

「自然災害からの安全・安心を得るためには、行政による公助はもとより、個々人の自覚に根ざした自助、身近な地域コミュニティ等による共助が必要であり、社会のさまざまな主体が連携して減災のために行動することが必要である」との認識のもと、「この動きが社会全体に広がっていき、個人や家庭、地域、企業、団体等が日常的に減災のための行動と投資を息長く行う国民運動を展開することにより、災害の被害を軽減し、一人でも多くの人を救うことにつなげていかなければならない。」として、それを推進する様々な取組を促していこう、という内容になっています。

基本方針の中に、「中高生が地域の防災活動の担い手となる例も見られることから、それらの事例を周知し、このような取組を促進する。」との記述もあります。アカザ隊の皆さん、あなたがたのような活動のことですよ。頑張ってください!

ところで、東京渋谷では、先週2日から今度の週末9日まで、地域住民や企業、自治体の協力による「だいじょうぶ」キャンペーン〜こわくないまち、つくろう〜が開催されています。
http://mainichi.jp/sp/daijoubu/news/20080306ddm010100174000c.html
「安心、安全」の街づくりの輪を渋谷から全国に広げようと、子どもから大人まで楽しく、防災や防犯を学べるさまざまなイベントが開催されています。

 私は行けませんでしたが、2日、3日と、私のNPO仲間が防災のブースを設けたそうです。そこで、「クイズ」を出したところ、全問正解者は1割以下という結果だったそうです。「え〜っ?」という感じですね。どんなクイズだったかというと・・・

(第1問)お母さんが、晩ご飯の準備をしています。震度7!大きな地震だ!さあ、お母さんがしなくてはいけないことはどっち?
1 火を消す  2 自分の体を守る

(第2問)14年前に、阪神・淡路で大きな地震があったのを知っていますか?そのとき、こわれた建物にはさまって、動けなくなっていた人を、たくさん助けたのはどっち?
1 警察・消防・自衛隊   2 となり近所のおじさん、おばさん

(第3問)大地震がきたときのために、用意しておかなければいけないことはたくさんあります。命を守るために大切なのはどっち?
1 家を強くして、家具が倒れないようにすること  
2 3日分の水と食べ物を用意すること

この日記をずっと読んでいただいている方にはとても簡単な問題だと思いますが、すべての問に対して、正解がほとんどなかったというのは、ややショックですね。正解は、7日お昼12時35分頃からのStyle FM の番組「安全安心スタイル」で。
http://www.768.jp/

災害とどう向き合うか、という基本の考え方がこのクイズに凝縮されています。こうした考え方が、多くの人に共有されるようになることが「防災文化」なのでしょう。まだまだ、私たちの努力が必要だな、と思いました。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第39回:「ドクターヘリ」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。

昔見たテレビ番組「サンダーバード」。秘密基地から発進する各種ハイテクメカで、事故や災害現場にレスキューに向かいます。かっこいいですよね。わが国にも、最近、そのような空飛ぶレスキューが登場しています。「ドクターヘリ」です。

ドクターヘリとは、医師が乗り込み、酸素吸入器や心電図などの医療機器を装備した救急ヘリコプターです。搬送中も気道確保や薬剤投与などの治療を行うことが可能。出動要請から約3分で救急専門医や看護師も同乗して基地病院から出動します。ヘリコプターの巡航速度は、通常、時速約200キロですから、半径50キロ圏内なら15分以内に到着することができます。最近よく耳にする「限界集落」など、山間部等の地上交通の不便な場所にとっては、救急時に医師による治療開始時間や病院への搬送時間を大幅に短縮できる、まさに「空飛ぶ救命室」なのです。

厚生労働省では、2001年度からドクターヘリの導入促進策を講じています。同省の調査によると、2002年の1年間、既にドクターヘリを運用している7県で実際に搬送した1,793人の患者のうち、「救急車による搬送ならば死亡していた」と判断される患者数は計510人。このうち実際に亡くなったのは379人だったので、ドクターヘリによって131人(約26%)の命を救ったことになります。また、救急車による搬送だと、障害が残る重症者は推計226人のところ、実際には140人にとどまり、ヘリ搬送によって38%減少したとみられる。このように、ドクターヘリは、救命率の向上や後遺症の軽減に大きく役立っているのです。

実際、ドクターヘリ先進国であるドイツでは、現在78機によるドクターヘリ救急網を整備し、国内のどこへでも15分以内で駆けつけられる体制を確立。交通事故による死亡者数を、20年間で3分の1にまで激減させるのに成功しています。

しかし、わが国ではドクターヘリが昨年時点で11機が運航するにとどまり、全国的に配備されるには至っていない状況にあることから、昨年6月、「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」という法律が議員立法で成立しています。
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/bill/pdf/h19-103.pdf

この法律は、ドクターヘリを用いた救急医療の全国的な確保を図るため、施策の目標等を定めた上で、費用に関する補助、助成金交付事業を行う法人の登録等について定めています。この法律により、各都道府県では、国の補助を受けて、救命救急センター等の医療機関にドクターヘリを計画的に配備することになります。

ただ、現在、そのような公的なドクターヘリ事業は13道府県、14医療機関で運用されているのみです。九州では、久留米大学病院と長崎医療センターの2カ所だけとなっています。

久留米大学病院のドクターヘリの活動状況をちょっと見てみましょう。
http://www.hosp.kurume-u.ac.jp/drheli/index.html

 久留米からは、福岡県内(北九州市の一部を除く)及び佐賀県内を約20分で全てカバーすることができるそうです。大分県の一部にも出動するそうです。平成17年度のデータでは、ドクターヘリ出動要請件数は現場要請が276件、病院間要請が136件の合計421件と、現場出動件数が病院間出動を大きく上回っていることが特徴です。

上記ホームページでは、実際の搬送事例も紹介されています。交通事故現場に到着したら3名の怪我人がいて、そのうち1名は心肺停止状態になったので、2名だけを搬送、この2名は助かったという、生々しい状況が報告されています。現場で活動されるフライトドクター、フライトナースに頭が下がる思いです。

命を救う救急時には、「緊急情報」「緊急搬送」「救急医療」の3つが必要です。最初の緊急情報は、携帯電話の普及等で、患者からのSOSを、迅速にキャッチすることはできるようになってきています。一方、3番目の「救急医療」は、最近、地域医療の問題として、いろいろと議論になっています。以前ご紹介したDMATは、大規模な事故や災害時の「救急医療」体制を確立しようとするものです。2番目の「緊急搬送」については、雪山で遭難した際に自衛隊や消防等の防災ヘリで救出する場面が報道されますが、これまであまり光が当てられていませんでした。ドクターヘリというのは、「緊急搬送」と「救急医療」の双方を効果的に行おうとする取組なのです。

最近の新聞で、公的な助成を受けない、民間ドクターヘリを導入する病院もあると報道されていました。医療の問題がいろいろと議論されている中、様々な取組によって、一人でも多くの命が助けられるといいですね。それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
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第38回:「桜島に行ってきました」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。先週、桜島に行ってきました。今日は桜島についてのお話です。

今月に入り、桜島の火山活動が久しぶりに活発化しています。2月3日には、2回にわたり昭和火口で「爆発的噴火」が発生したことから、気象庁は「噴火警戒レベル」を2から3に引き上げました。その後6日にも昭和火口で爆発的噴火が発生し、火砕流が火口から東約1.5kmまで流下しました。先週私が現地に行ったときも、白色噴煙があがっていました。

さて、先ほどの「噴火警戒レベル」とは、昨年12月1日から気象庁が新しく提供するようになった火山情報です。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kazan/index.html

従来の火山情報(緊急火山情報、臨時火山情報、火山観測情報)が、立ち入り禁止や避難等の判断に直結しておらず、わかりにくいとの批判があったことから、警戒避難と連動した情報提供をしようというものです。具体的には、火山活動の状況を噴火時等の危険範囲や必要な防災対応を踏まえて5段階に区分したものです。 住民や登山者・入山者等に必要な防災対応が分かりやすいように、各区分にそれぞれ「避難」「避難準備」「入山規制」「火口周辺規制」「平常」 のキーワードをつけて警戒を呼びかけます。九州では、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山、桜島などで噴火警戒レベルが導入されています。

レベル1が平常、レベル2は、火口付近への立ち入り規制を行うレベル。今回のレベル3というのは、火口周辺だけではなく、「入山規制」、登山禁止をするレベルです。これよりレベルが上がると、居住地にも危険が迫ってきます。居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生すると予想される(可能性が高まってきている)場合は、レベル4、「避難準備」になります。そして、そのような噴火が発生または切迫していると判断される場合は、レベル5、「避難」ということで、危険な居住地域(地域防災計画等に定められた地域)からの避難が必要なレベルになります。
 
レベル4以上で、居住地域や火口周辺に影響が及ぶ噴火の発生が予想された場合には、気象庁から「噴火警報」が出されます。昨年の気象業務法改正で、新たに設けられた警報です。

レベル2、3では「火口周辺警報」として情報提供されます。昨年12月以降、レベル3に引き上げられたのは今回の桜島が最初のケースになります。ちなみに三宅島はレベル2。他の火山は、硫黄島などを除き、すべてレベル1となっています。

桜島の場合、大正噴火のように全島に影響する溶岩流や火砕流、噴石飛散を伴う噴火、あるいは溶岩流が海岸まで到達した昭和噴火(1946年)のような噴火が切迫している場合がレベル5になります。そして、そのような噴火の発生が予想されるような事態(噴火活動の高まり、有感地震多発や顕著な地殻変動等)が見られる場合がレベル4になります。昨日(2月20日)までのレベル3は、火口から概ね2km以内に噴石が飛散するという状態で、実際、周辺2kmは立ち入り禁止となり、私が先週現場に行ったときも、そこから先へ行けませんでした。なお、2月20日午後になって、この噴火警戒レベルは3から2に引き下げられましたので、ちょっと安心ですね。

さて、桜島ですが、ご存じの通り、鹿児島県の薩摩半島、大隅半島に挟まれた錦江湾の中にあります。今からおよそ2万5千年前、姶良(あいら)火山が想像を絶する巨大噴火をおこし、火山ごと吹き飛んでしまい、大きな窪地ができました。それが錦江湾。巨大なカルデラです。桜島は、その後、カルデラの中で噴火活動を繰り返して形成された島だったのです。

桜島は何度となく大規模な噴火を起こしていますが、中でも大きいのが大正噴火(大正3年、1914年)です。大噴火で溶岩が大量に流れ出し、5つの集落が溶岩流に埋没、3つの集落が火砕流で消失しました。大量の溶岩は海峡を埋めて大隅半島と桜島を陸続きにしてしまったのです。黒神地区には、高さ3mの神社の鳥居が上の方だけを残して埋没している様が、今も残されています。(埋没鳥居)

桜島では火山灰等の噴火堆積物が雨によって押し流される土石流が頻繁に発生しています。 国土交通省大隅河川国道事務所では、野尻川などの河川で砂防えん堤・導流工などの整備を実施し、土石流対策に取り組んでいます。

 大隅河川国道事務所のホームページでリアルタイムの桜島の監視カメラ映像を見ることができます。是非一度アクセスしてみてください。
http://www.qsr.mlit.go.jp/osumi/camera_sabo.htm

 先週は、大隅半島の肝付町に宿泊。地元のおいしい焼酎を楽しみ、温泉にも入りました。鹿児島県は全域シラス台地で、ミネラル豊富な土地からできる水が良質なため、焼酎もおいしいのでしょうか。温泉もそうですが、火山は、災害をもたらすだけではなく、大きな恵みを私たちに与えてくれることを忘れないようにしたいものです。それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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