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第57回:「とりあえずの中締め」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。今まで1年以上、この日記を続けさせていただきましたが、本日(7月4日)付けで東京に転勤することになりました。もちろん、ブログはどこに居ても続けることができますが、新しい仕事に慣れるまで、しばらくお休みさせていただきます。

これまでこの日記は多くの方々にお読みいただきました。メール等で感想やコメントを寄せてくれた方々には本当に感謝しています。

私がこの日記でお伝えしたかったことは、「防災」というのは、何か特別なことではなくて、日常の中にこそ大切なことがあるということです。災害が発生するということは、非常時で、「日常」の対極にあるものです。しかし、平時から備えておかないと、「非常」に対応できません。

備えで重要なことは3種類あります。まずは、正しい知識を身につけることです。孫子の兵法に、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」とあります。備えなければならない災害はどのようなもので、自分たちにどのような被害をもたらそうとしているのか、それに対し、自分たちの弱点は何か、的確に把握することが第一歩です。

大地震を想定して点検してみたところ、住宅の耐震性に不安があったり、家具の固定が不十分であった、などを「知る」ことは、「防災」に向けた重要なステップです。

次に、災害が来ても、被害を軽減することができる対応策を、今すぐ実行することです。耐震補強をすること、家具の固定をすることなどで、命を救うことができます。このような備えのことを、減災対策(ミティゲーションMitigation)とよびます。

そして、災害後の対応を的確、迅速に行えるような備えも必要です。飲料水等、非常用持ち出し袋を準備するほか、家族との安否確認の方法をあらかじめ決めておくことなどです。このような備えを、プリペアドネス(Preparedness)とよびます。

 プリペアドネスについては、個人だけではなく、ご近所、地域ぐるみで行うと効果的です。一人暮らしや寝たきりのお年寄りに声をかけたり避難のお手伝いをすることをあらかじめ決めておくなど、いざというときにお互いに助け合う「共助」の精神を、日常的なお付き合いや、まちづくりの中で育んでおくことが必要です。

 人間は経験から学ぶものですが、幸か不幸か、一人の人間が大きな災害に遭遇する確率は高くはありません。ついつい、日常的なあれやこれやに紛れて、「防災」は後回しになってしまいがちです。しかし、わが国は、過去多くの災害に見舞われてきました。その経験から私たちが学べることはたくさんあるはずです。

大きな災害が発生すると、防災意識は一時的に高まります。でも、時間がたつとそうした意識は薄れてしまいがちです。私は、防災に関する意識を日常的なものとするにはどうしたらいいか、ずっと考えてきました。今ではこう考えています。「防災のために何かをしなければいけない」と思うから、何か特別なことだと思ってしまうのです。

もっと日常的な、「大切な家族を守りたい」「大好きなこの『まち』をもっといい『まち』にしたい」「お隣のおじいちゃんのことが気にかかる」などといった思いが、実は防災につながるものなのではないでしょうか。

人間は、経験ではなくても、「智恵」を共有することで賢くなれます。そのことで、「家族を守りたい」という、自然な思いを、よりよく実現することができます。専門家に任せるのではなく、我がこととして防災を考えるためには、まず「智恵」を共有することです。このように、市民が、自ら責任をもった変革主体となるための知識や技術を身につけることを、「エンパワーメント」とよんでいます。防災だけではなく、まちづくり、地域づくり全般で語られている言葉です。

この日記は、読者の方々をエンパワーすることを目指してきました。少しだけお休みをいただいて、また、新たなエンパワーメントのために、再開することにしたいと思います。

それではまたそのときまで。

********
渋谷和久(国土交通省大臣官房広報課長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月から2年間、九州地方整備局総務部長を務める。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
福岡勤務の2年間は、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流していた。
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第56回:「台風や大雨から命を守るために」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。梅雨らしい日が続いていますね。先週19日には九州北部をゲリラ的な豪雨が襲いました。週末22日の日曜日未明には、活発化した梅雨前線の影響で九州各地に大雨が降り、熊本県の球磨川の観測点で氾らん危険水位を超えたため、午前4時20分に九州地方整備局では非常体制を発令、局長以下、災害対策本部で指揮をとりました。沖縄ではもう梅雨が明けているようですが、九州ではあと半月近く、大雨の危険な状態が続きます。

さて、以前、この日記で、内閣府がまとめた「自然災害の『犠牲者ゼロ』を目指すために早急に取り組むべき施策」をご紹介しましたね。
http://www.bousai.go.jp/oshirase/h19/071218kisya.pdf

今日は、その中から、台風や大雨による犠牲をなくすための施策について詳しく見てみましょう。台風や大雨で、人命が犠牲になるのは、土砂災害が大きなウエイトを占めます。過去10年で、160人もの方が犠牲になっています。地すべり、土石流、がけ崩れと
いった土砂災害は、その原因となる土砂の移動が強大なエネルギーを持つとともに、突発的に発生することから、人的被害につながりやすいのです。22日の大雨でも、熊本県で裏山のがけが崩れて、1名の方が亡くなっています。

土砂災害対策としては、がけが崩れないように急傾斜地崩壊防止工事などの対策を実施することが第一ですが、公共事業として実施する場合は優先順位が必要ですよね。そこで、「犠牲者ゼロプラン」では、高齢者・障害者入居施設、防災拠点、避難所に対して重点的な土砂災害対策を実施することとしています。平成29年度までに、5200箇所について対策を実施することが目標です。

当面工事が実施されない多くの場所ではどうしたらいいでしょうか。あらかじめ万全の備えができるように、土砂災害に対するハザードマップの作成・訓練を促進することが重要です。プランでは、平成24年度までに土砂災害危険箇所が存在する全市町村においてハザードマップを作成すること、そしてそれに基づき防災訓練を実施することを目標としています。現在は、16%の市町村でしか、そのような措置が講じられていません。そのため、地方公共団体がハザードマップを容易に作成できる支援ツールを整備することなどもあわせて進める予定です。

また、台風・豪雨等に関する気象情報を充実させることも被害軽減に効果があります。現在、3日先までとなっている台風予報を、来年度までに5日先までとすることが予定されています。各種の警報も、ピンポイントで出されるとインパクトがありますよね。平成22年度までに警報等を市町村単位で発表できるよう、検討が進められています。

こうした災害で犠牲になりやすのが、ひとりで避難ができない高齢者などの「災害時要援護者」です。こうした方々の避難支援対策を促進するため、国による市町村モデル計画の策定や全国キャラバンの展開が予定されています。こうした取組を通じ、来年度までを目途に、市町村において要援護者情報の収集・共有等を円滑に進めるための「避難支援プ
ラン」の全体計画などが策定されるよう促進することにしています。

 次に、土砂災害以外で人命が失われるのは、台風の際に自分の田んぼを見回っていたおじいさんが誤って水路に転落死するなど、台風や大雨の際の外出時の事故です。この10年間でなんと172人が犠牲になっています。

大切なことは、危険な外出を避けるようにすることです。水位情報や浸水情報の提供を充実させることとし、この日記でもご紹介した「避難判断水位」(レベル1:水防団待機水位、レベル2:はん濫注意水位、レベル3:避難判断水位、レベル4:はん濫危険水位)を、来年度までに全ての国直轄河川や主要な都道府県管理河川の全てに設定することとしています。また、平成24年度までに一級水系の約70%について、「動く浸水想定区域図」の一般に提供したり、はん濫区域と水深についての予報を実施する予定です。

土砂災害と同様、洪水や高潮に対するハザードマップてら作成し、訓練を促進することも重要です。平成24年度までに全国の主要な河川の浸水想定区域内の全市町村において洪水ハザードマップを作成し、これに基づき防災訓練を実施することを目標としていますが、現在はわずか4%の市町村でしか実施されていません。

高潮マップも、平成24年度までにゼロメートル地帯を含む全市町村において高潮ハザードマップを作成し、これに基づき防災訓練を実施する予定です。(現在は約1割)

最後に、一番大切なのは、地域一体となった備えができるようにすることです。消防団、水防団を充実強化するため、現在約90万人の消防団員を100万人(うち、1万3千人の女性団員を10万人)確保することを目標として、団活動の理解向上や活動の活性化を図ることとしています。やはり、地域防災力の向上が第一ですね。

それではまた来週。

********
渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第55回:「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。さて、また大きな地震が起きてしまいました。今回も休日、14日土曜日の午前8時43分、岩手県内陸南部を震源とする、マグニチュード(M)7.2の地震が発生しました。阪神・淡路大震災を引き起こした地震がM7.3でしたので、ほぼ同規模ということになります。この地震により、岩手県奥州市と宮城県栗原市で震度6強が観測されました。
今回の地震による被害は、この原稿を書いている19日の時点で、死者11名、行方不明者11名、負傷者302名などとなっています。大きな災害になってしまいました。被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。
http://www.bousai.go.jp/saigaikinkyu/2008-iwate-cao-005.pdf

震源が深さ10kmと、地殻内の浅い地震であったことが特徴です。浅いので、地表の揺れが大きくなります。また、上下方向の揺れが水平方向の約3倍あり、上下に断層がずれる逆断層型地震ということがわかります。また、最近は、震動の強さを図る目安として、加速度(ガル)が注目されています。電車や自動車が急に動き出すと、ガクンと体に圧力がかかりますよね。これが加速度(速度の変化)です。今回の地震では、国内最大級の4022ガルという加速度を瞬間的に記録しています(防災科学研究所)。観測点が震源に近かったこともありますが、阪神・淡路大震災の時の818ガルの5倍近くです。スペースシャトル打ち上げ時の加速度が約3千ガルといいますから、いかにすごいかおわかりでしょう。重力加速度が980ガル、約千ガルで、これを超える揺れだと、固定していない物が飛び上がることになります。

今回の地震も、要注意とされていなかったところで発生しました。今回の地震の震源域付近ではM6を超える地震が時々発生していますが、M7を超える地震は1896年8月31日のM7.2の地震(陸羽地震)以降発生していなかったのです。

今回の地震では、市街地における住宅の倒壊よりも、山間部の土砂災害、特に「山体崩壊」と言ってもよいほどの大規模な土砂崩落が目立ちます。亡くなった方に、山間部での観光客、工事関係者など、住民以外の方が多いのも、そうした地震の特性と関係がありそうです。火山地域で地盤がもろく、雪解け水を含んでいたなどの原因が考えられますが、地盤がもろい地域は、日本では決して珍しくありません。地震による地盤災害とよばれる事例も、実はかなり多いのです。1984年の長野県西部地震では、長野県王滝村で御嶽山が山体崩壊とよべるほどの大規模な崩落を起こしたほか、各所で斜面崩壊を生じ、死者行方不明者29名を記録しました。その中には、温泉旅館の流失やキノコ狩りなどの最中に被災した人も含まれるなど、今回の災害と同じような傾向が見られます。

ちなみに、歴史に残る山体崩壊としては、「日本三大崩れ」というのが知られています。静岡県安倍川上流で、宝永4年(1707)の大地震で崩壊した「大谷崩れ」、安政5年の飛越地震により、富山県常願寺川最上流、立山カルデラの鳶山付近が崩壊した「鳶山崩れ」、それから、長野県姫川水系の浦川流域の斜面が明治44年(1911)、突如大崩壊を起こし、土砂を流出して姫川をせき止めた「稗田山崩れ」です。最後の稗田山では、川をせき止めた土砂が決壊して大洪水を起こし、流域に大きな被害を与えました。

 今回の政府の対応をご紹介しますと、この日記でもお伝えしたことがありますが、緊急参集チームが地震発生直後の8時50分に招集され、総理官邸に対策室が設置されました。地震の規模が大きかったことから、その日のうちに、防災担当大臣を団長とし、国土交通副大臣をはじめとする関係省庁からなる政府調査団を岩手県及び宮城県へ派遣しています。自衛隊をはじめ、警察広域緊急援助隊、緊急消防援助隊等が派遣され、救助活動等を実施したことは、報道でご承知の通りです。

岩手県警察では、ちょっとユニークな被災者支援対策を行っています。女性警察官5人からなる「イーハトーブ隊」を臨時に結成し、奥州市等の避難所に派遣し相談活動を実施したということです。宮城県警察も、女性警察官を含む10 数人で「栗駒シャクナゲ隊」を編成、栗原市栗駒の避難所を中心に派遣しています。

国土交通省では照明車、衛星通信車など災害対策用車両を派遣していますが、二次災害のおそれのある土砂崩れ現場などで威力を発揮しているのが、遠隔操作式バックホウで、これも4台を派遣しています。また、この日記でもご紹介した、緊急災害対策派遣隊TEC-FORCE(緊急調査団)が、初出動しています。現時点まで303班、743名が派遣されています。http://www.mlit.go.jp/common/000017464.pdf

 現地では余震も続いており、これから梅雨入りして雨も降ります。とても心配な状況ですが、関係機関が連携して、救助、復旧、復興に向けた取り組みが進むよう、私たちも全力を尽くします。

この原稿を書いているのは19日早朝ですが、九州北部は梅雨前線の活発化により大雨です。どこにお住まいであっても、災害への備えを怠らないようにしてください。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第54回:「梅雨入り宣言」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。今週火曜日(6月10日)、福岡管区気象台は、「九州北部地方(山口県を含む)は、6月10日ごろに梅雨入りしたとみられます。」と発表しました。いわゆる、「梅雨入り宣言」です。平年より5日遅く、昨年より3日早かったそうです。
http://www.fukuoka-jma.go.jp/fukuoka/gyomu/osirase/houdou20080610.pdf

今年は、九州南部は先月28日に梅雨入りし、6月2日には九州北部を「飛ばして」、関東、近畿までが一気に梅雨入りするという、ちょっと変わった感じになりました。この頃の九州北部では前線の北上が弱かったため、連続した天気の崩れは見込めなかったことによります。

よく「梅雨入り宣言」と言われますが、梅雨は春から夏に移る時期に現れる季節現象で、5日間ほどの「移り変わり」の期間があると言われています。梅雨入りの情報は、気象台の「週間予報」担当の予報官が、現在までの天候経過と1週間先までの見通しをもとに、前日や当日が「曇りや雨」の天気となり、翌日以降も、「曇りや雨」のぐずついた天気が続くと予想される場合に発表することになりますが、後日、実際の天候経過を考慮した検討を行い修正することもあります。このため、最近では、断定的な「宣言」ではなく、「○○地方は梅雨入りしたとみられます」という発表になっています。

 さて、そもそも「梅雨」って何なのでしょうか。「梅雨」とは、春から夏に季節が移り変わる時に見られる雨の季節のことです。梅雨の原因となる「梅雨前線」は中国や韓国にも延びているので、中国や韓国でも同じような気象現象を引き起こします。ちなみに「梅雨」は中国では「「梅雨(Mei-yu)」、韓国では「長魔(Changma)」と呼ばれているそうです。

梅雨の時期は、日本付近に梅雨前線が停滞します。梅雨前線の東側では、北に「オホーツク海高気圧」、南に「太平洋高気圧」があり、北からは冷たく湿った空気が、南からは暖かく湿った空気が梅雨前線に向かって吹き込んでいます。また西側では、北側に中国大陸などで作られた乾燥した空気が、南からは東側と同じように太平洋高気圧などから暖かく湿った空気が流れ込んでいます。梅雨前線付近では、この集まった空気が上昇し、雲や雨を作り出しています。

また、梅雨の時期は、北と南の高気圧の勢力がほぼ釣り合うため梅雨前線は、あまり南北に移動することはありません。このため、同じ地方で雨が降り続くことが多くなります。

それにしても、毎年同じ時期に「梅雨」になるというのは、なんか不思議ですよね。それには、上空の大気の流れが関係しています。上空には強い西よりの風「偏西風」が吹いています。梅雨の時期は、この「偏西風」がチベット高原付近を通るようになり、南北に分流して、北側を通る流れが中国大陸からオホーツク海にかけて大きく蛇行し、南側を通る流れが日本付近を通るようになります。梅雨前線は、この「偏西風」のやや南側に発生します。このため、毎年ほぼ同じような時期に、ほぼ同じような位置に梅雨前線が発生することになります。

梅雨の正体は、冬の高気圧と夏の高気圧の「主役交代」に伴うものとも言えるのですが、同じように、夏から冬に変わる時に、「秋の長雨」という現象が起きます。
※ 以上の情報は、下記を参考にさせていただきました。
http://www.asahi.com/special/june2005/TKY200506100260.html

 梅雨入りした九州北部では、活発な梅雨前線の影響で、早速11日、各地で激しい雨が続きました。熊本県内では、24時間雨量が200ミリを超え、6月として観測史上最多となった地点があります。私は11日、鹿児島県志布志市にいましたが、激しいスコールのような雨と、雷に驚かされました。「夜の雷は大雨の兆し」と言う言葉があるとおり、夜になると激しい雷雨になっていました。

梅雨の期間は、年間雨量の20%から30%に相当する雨が降りますから、梅雨の雨は日本の夏を乗り切る貴重な水資源でもあります。しかし、災害が多発する時期でもあるので、「梅雨入り」の情報によって、洪水などの災害への備えはもちろん、住宅周辺の排水路が詰まっていないか、通勤路や通学路にがけ崩れの危険がないかなど、身の回りを点検するきっかけにすることが大切ですね。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第53回:「福岡市揺れやすさマップ」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。

河川が氾濫して洪水が起きると、どのあたりまで浸水するか、という被害想定は「洪水ハザードマップ」として整備されています。水害の場合、氾濫原がわかりやすいので、想定もかなり詳細にできるようになりました。

こうしたハザードマップは、ご自身の家や学校、職場が被害を受けるかどうか、ピンポイントでわかるので、防災意識向上に大きく役立っています。どういうわけだかわかりませんが、人間は、「自分だけは災害にあわない」と根拠もなく思ってしまう傾向にあります。これを「正常化の偏見」と言うそうです。しかし、ハザードマップを見て、自分の家が被害想定区域に入っていると、さすがに災害への備えをしなければ、と思うようになるはずです。災害を「実感」することが、防災の第1歩というわけですね。

最近は、洪水だけではなく、津波、高潮、火山などの災害に関するハザードマップも整備されつつあります。被害拡大の様子をリアルタイムで見せる「動くハザードマップ」なども開発されています。こうした工夫は、地域の避難対策促進などに活用されています。また、国土交通省では、全国一級水系の中小河川を対象として、航空レーザ測量の三次元地形データから作成した河川横断図を基に治水安全度評価を行い、順次公開することにしています。九州では、大分川の評価が公開されています。
http://www.nilim.go.jp/lab/rcg/newhp/seika.files/lp/index.html

地震については、いつ、どこで発生するかわからない(逆にいうと、いつ、どこで発生してもおかしくない)ので、こうしたハザードマップ作りは難しいとされていました。しかし、2001年に横浜市が、いくつかの地震を想定して、地表の揺れを50mメッシュで示す詳細な「地震防災マップ」を作成、全戸に配布したところ、耐震診断の申込みが、一気に倍増したのです。(横浜市は、その後改訂版を作成、公開しています。下記参照。)
http://www.city.yokohama.jp/me/anzen/kikikanri/jisin_map.html

これは効果的であるということで、内閣府が中心になって、各自治体が「地震の揺れやすさマップ」を作成する際の指針「地震防災マップ作成技術資料」を2005年に作成しています。そして、実際に作成する上での基礎資料として、また一般の人にもイメージを持ってもらうために、全国を1kmメッシュに区切って、どの地域が相対的にゆれやすいかを概括的に表した「表層地盤のゆれやすさ全国マップ」を、同年内閣府が公開しています。http://www.bousai.go.jp/oshirase/h17/yureyasusa/zenkoku.pdf

地震による地表での揺れの強さは、主に、「震源特性」「伝播特性」「地盤特性」の3つによって影響されます。「震源特性」というのは、地震の規模(マグニチュード)に大きく影響され、「伝播特性」としては、例えば震源から近いほど揺れる、ということが言えます。最後の「地盤特性」は、表層地盤のかたさ・やわらかさに影響されるということです。マグニチュードや震源からの距離が同じであっても、表層地盤がやわらかな場所では、堅い場所に比べて揺れは大きくなります。我が国では、平野部に多くの人が住み、活発な経済
活動が営まれていますが、このような地域は、内閣府のマップでも分かるように、実に揺れやすい地盤で覆われ、揺れがより大きくなることがわかります。

さて、このほど、福岡市が、「福岡市揺れやすさマップ」を作成、公表しました。これは、発生が心配されている警固断層帯南東部を震源とする地震が発生した場合、市内各地域がどの程度揺れるかを50mメッシュで、8段階で色分けして示したもので、各区それぞれにパンフレットが作成されています。
http://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/taishin/bousai/map_2.html

 例えば、断層の真上にある中央区のマップを見ると、断層の東側、天神とその周辺地区は、軒並み震度6強の「真っ赤」な色に染められています。警固断層帯の東側は、特に柔らかい地盤が広がっているので、揺れが大きくなる傾向にあるのです。市内の木造建物は10棟に1棟の割合で全半壊すると予測されています。上記パンフレットには、揺れと建物被害の関係もわかりやすく解説されています。不安に思われる方は、専門家による耐震診断を受けることをお奨めします。

 先日、テレビのある討論番組で、「行政は被害想定だけ示して、対策を打たないのはおかしい」と発言されている方がいました。でも、この日記でも何回か紹介したとおり、中央防災会議では被害軽減のために防災戦略や対策大綱を策定しています。その中でも重視されている耐震化については、法制度も強化され、耐震診断、耐震改修に係る助成制度も、かなり充実されています。お住まいの市町村に是非ご確認ください。

 福岡市では、住宅の耐震診断件数はまだまだ少ないと聞いています。今回のマップ公表を機に、市民の皆さんの防災意識が向上することを期待したいと思います。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
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第52回:「緊急災害対策派遣隊(TEC−FORCE)発足」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。

5月12日に発生した中国四川省の大地震、日々の報道で犠牲者がどんどん増えていく様子は、本当に心が痛みます。政府は、被災者の捜索・救助を行う「国際緊急援助隊」を派遣、現地でも大きく報道されたことは皆さんご存知だと思います。この「国際緊急援助隊」とは、どういうものなのでしょうか?

日本は、地震や台風などの自然災害が多いため、これまでに豊富な経験と技術的なノウハウを蓄積してきました。こうした経験を外国の災害救援に活かすため、被災国等の要請を受けて派遣されるのが国際緊急援助隊です。
http://www.jica.go.jp/jdr/about.html

このうち、「救助チーム」は、被災地での被災者の捜索、発見、救出、応急処置、安全な場所への移送を主な任務としています。チームは、警察庁、消防庁、海上保安庁の経験豊富な救助隊員から構成されます。今回の中国の震災に対して、まず5月15日、国際緊急援助隊の救助チームが派遣されました。青川県での捜索活動の結果、母子の遺体を発見、黙祷を捧げ中国側に引き渡した様子は皆さんも報道でご存知のことだと思います。
http://www.jica.go.jp/activities/jdrt/2008/080519_01.html

5月20日からは、救助チームと入れ替わる形で「医療チーム」が派遣されています。医療チームは、被災者の診療または診療補助を行い、必要に応じて疾病の感染予防や蔓延防止のための活動を行います。メンバーは、あらかじめ登録された医師、看護師、薬剤師、調整員などから編成されます。現地での医療チームの活動は、下記で紹介されています。
http://www.jica.go.jp/activities/jdrt/2008/080524.html

国内でも、人命救助活動等を行う応援部隊が派遣されます。まず、消防については、平成7年に「緊急消防援助隊」が発足、平成16年からは法制度上も明確化されています。大規模災害や特殊災害が発生した際には、消防庁長官の指示または求めにより、これらの部隊が出動します。現在の登録部隊数は、全国の消防本部の約98%にあたる789消防本部から3,960隊、約4万6千人の体制となっています。
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/kinkyu/kinshoutai.pdf

なお、東京消防庁には、消防救助機動部隊、通称「ハイパーレスキュー隊」とよばれる部隊があります。高度な救助・救急技術をもった隊員と震災対策用救助車・特殊救急車・大型重機等の特殊車両で構成され、赤外線スコープや電磁波探査装置等の人命探索機材を備えています。平成16年の新潟県中越地震で発生した長岡市の土砂崩れによる乗用車転落事故現場で、当時2歳の男の子を、地震発生以来4日ぶりに救出する上で中核的役割を果たしたことで有名です。

警察も同じように、平成7年に「広域緊急援助隊」を創設しています。全国の警察に設置され、約4700人の隊員で構成されています。国内で大規模な災害が発生した場合など、直ちに被災地等に赴き、被災者の救出救助、緊急交通路の確保等の活動に当たっています。なお、平成17年には、警察版ハイパーレスキュー部隊とも言える、特別救助班(P−REX)が12都道府県警察に設置されています。

さて、国土交通省も、広域支援部隊を発足させました。「緊急災害対策派遣隊(TEC−FORCE)」(Technical Emergency Control Force)です。これは、大規模自然災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、被災地方公共団体等が行う災害応急対策に対する技術的な支援を円滑かつ迅速に実施することを目的としたものです。これまでも、大きな災害の際には緊急支援等を行ってきましたが、その都度体制をとって対応する形となっていました。TEC−FORCEにより、事前に人員・資機材の派遣体制を整備することができます。

本省と地方整備局等の地方支分部局、気象庁などに設置され、先遣班、現地支援班、情報通信班、高度技術指導班、被災状況調査班、応急対策班、輸送支援班、地理情報支援班、気象・地象情報提供班より構成されます。今後、大規模自然災害が発生したときは、被災地に国土交通省からTEC−FORCEを派遣し、被害状況の調査、被害の拡大防止、早期復旧に関する地方公共団体等の支援を行うことになります。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/05/050425_4_.html

全国で約2千人の職員を隊員に指名します。本省ではすでに5月9日に発足式を行いました。九州地方整備局では、本日午前、発足式を行い、300人強の隊員に職務命令書を交付します。私も、隊員に訓示をする予定です。
http://www.qsr.mlit.go.jp/n-kisyahappyou/h20/080528/index2.pdf

中国やミャンマーの例を見るまでもなく、日本ではどこでも、大地震や大規模水害に見舞われるおそれがあります。九州が被災地になって、全国各地から応援を要請する可能性もあります。TEC−FORCEを中心に、日々の訓練、備えを一層充実させていくことが重要だ、心を引き締めて・・・ 多分、私はそのような訓示をすると思います。


それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第51回:「水防工法のいろいろ:嘉瀬川での水防演習」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。

九州地方整備局では、さる5月11日、佐賀県を流れる嘉瀬川の河川敷(バルーンフェスタの会場になるところです)で、大規模な水防演習を実施しましたので、今日はそのご報告をしましょう。
http://www.qsr.mlit.go.jp/takeo/hotnews/hotnews02/h20hotnews/080512.pdf

 正確には、嘉瀬川を含め、六角川、松浦川を含めた7会場で実施、しかも佐賀県の総合防災訓練と共同開催という大がかりな内容でした。地方整備局と県が共同開催する訓練は、九州では初めてのことです。

 関係自治体や消防、水防団、警察、自衛隊、医療機関、建設業協会、ボランティア団体など、57機関、約3500人が参加しました。

 どんなことをしたかといいますと・・・ まず、土のう作りです。これは、小学生が中心になって体験学習的に行いました。私も、子供たちと一緒にやってみました。あまり満杯にせず、7分目くらい、約30kgあたりが目安と言われています。結び方にはコツがあるのですが、これは専門家がやってくれました。

 さて、堤防から水が溢れそうになる(越水)と、「積み土のう工法」、要するに土のう積みが必要になります。ただ積んでいるわけではなく、実際に見てみると、1段目から3段目くらいまでは互い違いに積んで、間に土を盛ります。結び目は下流側に向けます。最後に、必要に応じ、杭を打ち込みます。水防団の皆さん、さすがに手慣れていました。

 会場には、「月の輪工法」とか「釜段工法」という表示がありました。ご存知ですか?堤防の裏から、漏水した水が噴出しているような場合、放置すると水圧で噴出口が大きくなるので、堤防と噴出口を囲むように半円形に土のうを積みます。これが「月の輪」。堤防からやや離れた場所から噴出している場合は、土のうで円形に取り囲みます。これが「釜段」です。水防団の皆さん、あっという間に作業をされていました。

 堤防が洗掘されそうなときは、「シート張り工法」が必要になります。一見、ブルーシートを張るだけのようですが、実際見てみると、傘の骨のように竹串を結んだり、重しとして土のうを結びつけたり、意外に複雑な工法であることがわかります。

 堤防に亀裂が発見された場合は、一刻も早く対策が必要です。演習では、「繋(つな)ぎ縫い工法」が紹介されていました。これは、比較的大きな亀裂のときの工法で、まず、木の杭を何本か打ちこみ、堤防の上にも打ちます。その間を竹で繋ぎ合わせ、亀裂の進行を防止するやり方です。水防団の皆さんのきびきびとした動きが印象的でした。

 さて、演習では、水防だけではなく、地震直後の応急対応訓練も同時に実施されました。陸上自衛隊のヘリによる佐賀大付属病院医療チームの投入訓練、消防、県警による、座屈ビルや瓦礫からの救出搬送訓練、ヘリを使った重篤患者の緊急搬送訓練など、実践さながらのリアルな訓練内容が満載でした。

 中でも印象的だったものを2つ紹介しましょう。まず、陸上自衛隊の応急浮橋を使った避難、物資輸送訓練です。これは、いくつかのパーツを連結して浮橋を作り、ヒトや物資輸送車を載せて動力ボートで対岸まで移動させるものです。自衛隊の大型輸送車も搭載できるもので、スタンバイまでごく短時間だったのには感心させられました。

次に、演習の最後に実施された大規模火災消火訓練です。周辺地域から応援に来た消防車が、地元消防団からの中継送水により消火活動を行うというもの。今回は林野火災を想定していましたが、火災現場が水利から遠い場所にある場合は、何台かの消火ポンプを中継して消火活動を行う必要があります。取水場所、中継ポンプ、放水場所の連携を十分に行う必要があり、演習では多少準備に時間がかかりましたが、一斉に放水が開始された時は、大きな拍手がおきました。こうした広域的な連携を必要とする作業には、日頃の訓練がとても重要だと思いました。

最後に陸上自衛隊と福岡市消防局のヘリによる空中消火訓練。ヘリから吊された水嚢から直接消火するもので、最近は最大で5トン程度もの水量を運べるものもあるようです。河川から直接取水することも可能なので、機動的に消火を行うことができます。この訓練、初めて見た参加者も多かったようで、放水されると、大きな歓声があがっていました。

今回の訓練を通じて、国、県、市町村、消防・水防団、自主防災組織など、多くの関係者の連携が重要であることについて、参加者が認識を新たにしたことと思います。また、専門家による訓練を見ていると、とても頼りがいがあるように思えますが、何度も書いているとおり、身近な地域の防災力が最後には効いてくるのです。今年も、間もなく出水期を迎えます。水害への備えを怠らないようにしましょう。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第50回:「中国四川省大地震」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。この防災日記も記念すべき50回を迎えました。毎回お読みいただき、ありがとうございます。

さて、前回はミャンマーのサイクロン被害について書きましたが、その後、今週12日午後、中国西部の四川省において大規模な地震が発生しました。アジアで立て続けに大きな災害が起きてしまいました。

5月12日15時28分頃(日本時間)、中国の四川省で発生した地震は米国地質調査所の解析では、マグニチュード7.9という巨大地震です。この原稿を書いている15日現在の報道では、犠牲者の数は1万5千人近くに上り、さらに四川省内で2万5千人以上が生き埋めとなっているとのことです。倒壊家屋も21万6千棟に及ぶなど、地震発生から時間が経過するにつれ、被害がどんどん拡大しています。こうした状況は、13年前の阪神・淡路大震災を思い出させます。最新の報道では、被災者数は四川省だけで1000万人を超えたとのこと。一帯の人口の半数に相当するそうです。被害の甚大な地域は6万5千平方キロに及び、雨も重なって、被災地の大部分で土砂崩れや土石流が発生しており、交通網の遮断から救援活動も困難な状況が続いているようです。本当に甚大な災害です。 

この地震は地殻内で発生した地震で、四川省を北東−南西方向に走る断層帯(竜門山断層)の一部が動いて起きたとみられています。断層が西北西−東南東方向に圧縮されてずれ、片方が持ち上がった逆断層型だったようです。米地質調査所によると、断層の規模は長さ約200キロ、幅約20キロという大きなもので、地震開始から約50秒かけて最初の断層が動き、10秒後に2番目の断層が約60秒かけて動き、揺れは約2分間続いたのではないか、と見られています。震源が深さ10kmと浅く、地表近くで最も大きくずれたため、それが被害の拡大につながったようです。震源近くでは地表に約7メートルの段差が現れているとみられています。

実はこの付近は、大きな被害を伴う地震が度々発生している場所です。1900年以降では、今回の地震の100kmほど北で1933年8月に発生したM7.5の地震により、死者6,865人の被害が生じました。また、今回の地震の700kmほど南で1970年1月に発生したM7.8の地震により死者15,621人の被害が生じています。

中国をはじめユーラシア大陸の大半を乗せたユーラシアプレートは、北上するインド・オーストラリアプレートとヒマラヤ山脈でぶつかり合っています。竜門山断層はユーラシアプレート上にあり、ヒマラヤ山脈からは離れていますが、両プレートのせめぎ合いで生じた歪(ひず)みがたまっていたと考えられます。

13年前の阪神・淡路大震災を起こした断層(六甲-淡路断層帯)は、南西から北東に伸びる約50kmと言われていますので、今回の断層のずれが、とても大きな規模であることがわかります。阪神・淡路大震災のマグニチュード(7.3)は、米国基準の「モーメントマグニチュード」だと6.9になり、マグニチュードは1つあがるとエネルギーが32倍ですから、阪神・淡路大震災を引き起こした地震の30倍のエネルギーだったことがわかります。

テレビの映像で見る限り、現地の建築物は、耐震性が弱いものが多いような印象を受けました。火災などが多発しているようではないので、犠牲者の多くは、やはり建物倒壊によるものと思われます。しかし、一般家屋だけではなく、学校などの公共的建物までが倒壊していることは、ショックでした。ちょうど午後の授業時間帯だったこともあり、児童生徒が倒壊した校舎の生き埋めになっているという状況は、何とも残念です。日本では、学校は避難所になる場所でもあり、数年前から全国で耐震化を急いで進めていますが、これは何としても急がれることだと痛感します。

実は中国には地震局という組織があって、地殻変動はもちろん、地下水や井戸水までも常時観測する体制をとっています。1975年の2月、遼寧省でM7.3の地震が発生したときは、直前の前震活動があったため、防災体制を強化、人々を屋外に避難させるため、映画上映会を開催していたところへ地震が発生、「地震予知」に成功した事例として有名になりました。その後も、いくつかの地震について直前の避難措置が効を奏したこともありましたが、1976年の唐山地震(M7.8)のように、「予知」がなされず、24万人を超える死者が出た事例もあります。

地震を正確に予知することは現時点では困難だと考えられています。わが国でも、東海地震については「地震予知情報」を出すことを想定していますが、それは、実際に地震発生の端緒を捉えた場合であるし、それも間に合わずに突然発生することも想定しています。予知に関する研究を進めることも必要ですが、現時点では、それを過信せず、建物の耐震化を進めるなど、命を守るために確実に必要な備えを怠ってはいけないと思います。隣国の災害に心痛めつつ感じたことです。

それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第49回:「ミャンマーでのサイクロン被害など」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。ゴールデンウイーク、楽しまれたでしょうか?

さて、幸いにもこの連休中、日本では大きな災害はありませんでしたが、海外では災害で大きな被害が出た地域があります。

まず、ニュースなどでご存じでしょうが、ベンガル湾で発生した大型サイクロン「ナーギス」が、2日夜から3日にかけてミャンマー南部に上陸、旧首都ヤンゴンも直撃し、大きな被害をもたらしました。正確な情報が入りづらいのですが、この原稿を書いている8日現在、報道では死者2万人以上、行方不明者4万人以上といいます。犠牲者はさらに増える見通しで、家を失った人は100万人に達する恐れがあると伝えられています。ミャンマーで最大級の災害で、熱帯低気圧による災害としては、1991年にバングラデシュで約14万人が死亡して以来の大きな被害となりました。最新情報は、例えば「アジア防災センター(ADRC)」のHPでご確認ください。
http://www.adrc.or.jp/view_disaster_en.php?NationCode=104&lang=en&KEY=1152

また、NASAのTerra衛星で捉えたミャンマーの洪水前、洪水後の比較を衛星写真で見ることができます。洪水後、デルタ地帯が大規模に浸水している様子がよくわかります。
http://www.nasa.gov/topics/earth/features/nargis_floods.html

このサイクロン、上陸直前に急速に発達し、ピーク時に都市を直撃したことで、被害が大きくなったようです。高波で村ごと壊滅的被害を受けたところもあったと伝えられています。サイクロンとは、要するに熱帯低気圧のことですが、地域ごとに異なる呼び方をされています。日本を含む北西太平洋・アジアでは台風またはタイフーン(typhoon)、アメリカなどの北中米ではハリケーン(hurricane)、その他の地域(主にインド洋周辺、太平洋南部)ではサイクロン(cyclone)と呼ばれています。サイクロンは、「蛇のとぐろ」と言う意味だそうです。ベンガル湾とは、インド、バングラディシュ、ミャンマーに囲まれているインド洋北西部の湾です。「ベンガルカレー」って聞いたことありますよね?ここで発生するサイクロンは数は多くないのですが、ここに面した地域はデルタ湿地帯で、多くの河川が流れています。堤防整備等が十分ではなく、高潮や洪水で被害が大きくなる傾向にあると言われています。実際、この地域では、激しい雨に伴い高さ4メートルの洪水も発生、多くの家が押し流されたと伝えられています。災害情報がわが国のように迅速に伝わらなかったことが被害を大きくしたとの見方もあります。

私は、15年ほど前、JICA(国際協力機構)の専門家としてインドネシアに派遣され、東南アジア、南アジア諸国の治水担当者に対して研修を行ったことがあります。わが国のように人命保護の観点から治水行政を行っている国は当時は少数で、農業部門の灌漑の専門家という立場で、わが国の治水技術を学ぼうという姿勢が主だったことに少なからず驚かされました。わが国でも、昭和34年の伊勢湾台風では死者行方不明者が5千人近くに及びました。しかし、翌年災害対策基本法が制定され、治水を中心とする国土保全事業も進められ、防災対策は確実に進展しました。今回のような災害を見ると、事前の「減災」対策の重要性を痛感します。

ところで、ベンガル湾でサイクロンが発生したということは、そろそろ台風シーズンに入ってきた、ということです。そう思って、連休中にチェックしてみたらフィリピン近海で対流が活発な状態にあり、「台風の卵」のようなものが出来つつありました。案の定、8日午前3時に、台風2号(ラスマーン)が発生したと気象庁が発表しました。
http://www.jma.go.jp/jp/typh/

次に、日本から遠く離れたチリでは、チリの首都サンティアゴから1200キロも南方のチャイテン(Chaiten)というところで2日、火山が噴火し、約4500人の住民が避難したということです。噴煙が上空20キロまで上がり続けており、さらに激しい噴火の恐れもあるといいます。この火山のことはよくわかっていないのですが、400年以上も活動を休止していたのが、突然噴火したとのことです。火山活動が今後どの程度続くのか、現時点ではよくわからないようです。
  
 さて、連休中は静かだった日本でも、8日の午前1時45分頃、茨城県沖でマグニチュード7.0の地震が発生しました。水戸市などで最大震度5弱を記録。連休明け、防災のたがをゆるめないようにしたいものです。それではまた来週。

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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第48回:「マンションの防災対策」
皆さん、こんにちは。「しぶさん」こと、渋谷和久@国土交通省です。今日は、マンションにお住まいの方、必読です。

高層マンションの、特に高いフロアの部屋では、大地震がおきたらどうなるのでしょうか?マンションの耐震性はバッチリで、倒壊のおそれがないケースを想定しますが、耐震性があるから、まったく被害はないと言い切れるでしょうか?

福岡県西方沖地震で中高層住宅でどのような被害があったかという調査結果によると、「棚から置物や小物が落下」したのが、調査対象の91.5%のお宅。ほとんどですね。このほか、「テレビ、電子レンジ、パソコン等、重量物の落下」が42.4%。「家具、棚、冷蔵庫等の転倒」が39%あり、これらは、人命にも影響しかねません。

最近、大地震の高層住宅への影響で注目されているのが「長周期振動」です。震源域から遠く離れたところに、振幅が1秒以上のゆっくりとした揺れが伝わってくると、高層マンションやビルの上層部では、1メートルから数メートルを往復するような揺れが長く続きます。固定していないピアノやキャスター付き家具(電子レンジ台が危険!)は部屋中を動き回ります。耐震マンションに住んでいるからと言って安心せず、家具の固定はしっかり行いましょう。

さて、マンション自体は無事でも、生活には大きな影響が出てくるおそれがあります。「彼女を守る51の方法」の監修者、渡辺実さんは、そうした影響を受ける人を「高層難民」とよんでいます。まず、エレベーターが止まることが予想されます。電気や水道、ガスも止まると、部屋が無事でも、生活できず、必要な物資を「下界」から調達する必要があります。高層フロアから階段で何往復もすることになります。水の配給を受けて、20リットル入りポリタンクを抱えて階段を10階や20階までのぼっていく姿をご想像ください。

トイレも困りますね。水道が止まると、水洗できません。お風呂に残り湯をためておくと、水洗タンクから水を入れることができます。一般家庭の浴槽は約200リットルの水が入りますので、しばらく大丈夫です。ただし、古いタイプのマンションでは、その下水が、下の階のお宅を通ることがあります。下の階の下水管が破損していないことを確認しないと・・・おっと、これ以上は言わなくてもわかりますよね。

さて、「高層難民」にならないためには、日頃からこの日記で書いているとおり、「ご近所の底力」が大切です。仮設トイレをマンションの駐車場に設置した場合、どう使うかのルールを決めておく必要があります。自治会で炊き出しをするのか―。こうした情報を、どうやって住民に伝えるか、などなど。住民の安否確認のため、名簿を作っておくことも大切です。避難所に移る人もいるでしょうから、そうした人たちの居場所も把握しておくと、住民総会などを開く際、連絡がつけやすいです。マンションなどは、お互いの生活パターンも異なったりして、文字通り「隣は何をする人ぞ・・・」というところもあるかもしれませんが、是非、この機会に、ご近所づきあいをしてみませんか。

兵庫県加古川市のマンション「加古川グリーンシティ」(約600世帯)では、住民全員が自主防災組織「防災会」に入っています。「楽しく防災活動を」をモットーに、普段からさまざまな行事で住民が交流を深めています。
http://www.greencity.sakura.ne.jp/greencity_bousaikai/index.html

ユニークなのは「町内チャンピオンマップ」。600世帯近くもいると、いろいろな職種や免許を持った方々がいらっしゃいます。それらの方々の専門知識や技能を防災に役立てよう、というわけです。専門じゃなくても、子守ならできる、炊き出しできます等、何でも登録していただくそうで、登録メンバーは200名を超えたとのこと。

このほか、お年寄りなどに、「非常時に一声かけてください登録」を呼びかけたり、「ふれあい餅つき大会」と称する炊き出し訓練など、ユニークな取り組みを行っています。ちなみに、防災会のホームページには、次のような説明があります。ご紹介しましょう。

「楽しくなければ防災の輪は広がらない。『楽しく防災活動をやろう』と言うことを絶対に忘れないようにしています。防災活動は『継続すること』が大きな力になります。そのためには楽しくなければならないと考えています。『楽しく防災活動をやろう』を合言葉に、災害に対しては『正しく恐れること』『普段の生活の中で楽しく備えること』を今後も防災活動で実施実践しています。」

え?しぶさんが普段書いていることと同じですって?いや、逆です。私は、こういう「まちば」の方々から、いろんなことを教えていただいたのです。

ゴールデンウイークもいよいよ佳境で、明日から4連休ですね。でも、行楽地はどこも混雑しているので、家でのんびりされる方も多いと思います。マンションにお住まいの方は、今回の内容を参考に、マンションの防災対策について、ご近所の方々と話をしてみてはいかがでしょうか。

それではまた来週。皆さん、よい連休を!

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渋谷和久(国土交通省九州地方整備局総務部長)
内閣府防災担当企画官、国土交通省都市計画課室長を経て、平成18年7月より現職。
関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員。日本自然災害学会、地域安全学会、災害情報学会会員。日本災害復興学会理事、NPO法人「都市災害に備える技術者の会」企画委員、「東京いのちのポータルサイト」理事、「京都災害ボランティア・ネット」理事。
単身赴任2年目で、平日は福岡のおいしい魚と焼酎を堪能し、休日はエアロビクスで汗を流す。
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